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専修学校教育重点支援プラン2008

1.事業名

 効果的なコンテンツ作成に重要なコーディネータ育成のプログラム開発および実証

 

2.事業の概要

 リハビリテーションを必要とする人々に適切な内容(治療や援助、情報等)を提供するためには、身体病理から社会的制約までの機能レベルや生活環境等を、対象者の全人間的な側面から評価し、効果的な治療・援助・指導計画を立て実践しなければならない。

 このためリハビリテーション分野の教育では、幅広くかつ膨大な知識と技術の習得が必要であり、そのためにより効果的で効率的な教授法の工夫が求められている。

 一般に専門学校におけるリハビリテーション教育の場では、教室で人体や疾病の知識、各種治療や援助技法など一般則、人間心理やホスピタリティ・マインド、コミュニケーション・スキル等を学び、臨床実習での現実的な事例への対応を通して、臨床医療従事者として必要な知識の獲得と治療・援助のパフォーマンスを確認している。

 しかしながら、臨床で学生が出会う事象の見え方は、教室教育で習った一般則の知識の構造とは異なる場合が多い。

 だからこそ臨床での実習による教育は重要なのであるが、臨床(現実・事例)を、教室(知識・一般則)と対立する概念として取り扱ってしまう学生が結構見受けられる。

 教員は、学生が両者の特徴をよく理解して選択・組み合わせが出来るように支援し、臨床(現実・事例)と教室(知識・一般則)とが併存する概念として捉えられるように提示すべきである。

 そのために本校では、教室教育と臨床実習を相互に補完し、両者の連携を強化することを目的に、eラーニングの活用をベースとした教育総合デザインの開発・検証を継続している。

 平成18・19年度の文部科学省委託事業において、ID手法(注1)をもとに知識領域の学びと実践的パフォーマンスの修得に適したeラーニング教育を計画し、必要なコンテンツの設計・開発と遠隔教育を実施した。

 検証の一環として行ったアンケートでは、コンテンツによる学習に関して、学習内容は興味深く、期待されている学習内容も理解できるという回答が得られた。

 また、従来授業のみの学習とコンテンツ併用の学習で学生の達成度を比較したところ、コンテンツ併用の学習をした者の成績が従来授業のみで学習した者に比べ得点が高く、統計的な有意差が認められた。

 最も教育効果が高いと評価を受けたコンテンツは、画像を入れ、キャラクターやアニメーション、動画を用い、音声で説明を入れたものであった。

 学校での特色にあった有効なeラーニングコンテンツの開発には教員の関わりが重要であるが、一方では教員に学校教育や臨床実習に専念できるような環境を提供することがより重要であり、その意味からコンテンツ制作に関する負担を軽減することは、教育総合デザイン上の大きな観点となる。

 そのためには、教育内容やノウハウ・資料等を提供する教員と、コンテンツを造り込む開発担当者の分業体制を構築するとともに、教員の希望する内容と開発担当者が制作したコンテンツとの間にミスマッチが生じないようにするために、コーディネーター的役割を担う人材が不可欠であり、3者の協力体制を確立する必要がある。

 教員の設計を的確に把握し、それをコンテンツ開発を担当する者に正確に伝えることのできるコーディネーターの存在が、教員やコンテンツ開発担当者の時間と労力の節約につながり、コンテンツの品質向上とコスト削減にも大きく寄与することになるが、今までのeラーニングコンテンツ開発においては、このような媒介者の存在がほとんど無かったことにより、教員が考えている設計をうまく開発者に伝えられず、教員自らがコンテンツ設計・開発・運営まで携わって、納得のいくコンテンツを追及していたのが現状としてある。

 本事業では、コーディネーターとして実際に担当者を配置し、リハビリテーション教育におけるeラーニング実運用に使用するレベルの高品質なコンテンツを開発する中で、教員とコンテンツ制作者およびコーディネータの連携作業を円滑に進めるコミュニティの形成を図るとともに、それから得られる知見をまとめて、コーディネーターを育成する教育プログラムを開発する。

 本事業での開発内容は、医療系分野だけでなく、広く他分野でも活用出来る汎用的なものに仕上げる予定である。

 

 (注1) ID手法(インストラクショナルデザイン: Instructional Design)とは、授業全体を分析・設計・開発・実施・評価を行い、教育の効果と効率と魅力を高めていく方法論である。

 eラーニングの導入時に教育効果を上げるために活用されるケースが増えている。企業での研修に導入されている。

 

3.事業の目的

 リハビリテーション分野の教育における知識領域と実践的パフォーマンスの学習のそれぞれについて、高品質なeラーニングコンテンツを従来授業、実習の教育プログラムに最適配置できるように開発することにより、一層の教育効果が得られるものである。

 効果的な内容にするには、教育内容を熟知した教員が設計し、メディアに精通した開発技術者が開発することが望ましいと考えられ、eラーニングコンテンツの開発から活用までの全てを教員が担うことは、通常でも多忙な教員にとって現実的でない。

 教員とコンテンツ開発技術者の連携を推進し、開発力を高めることが肝要である。

 教員が、設計段階で教育方略の選択、コンテンツの構成、開発して欲しいメディア(動画やアニメ、図など)のイメージの提示を担当し、開発技術者に創り込みを委託する場合、リハビリテーション教育における医学モデルや人体の構造等を、学習者の正しい理解を促すように教員の想定通りの表現に加工できるかどうかが課題である。

 教員と開発技術者との連携を推進するコミュニティ形成が必要であり、そのコーディネイトを担当する人材育成が同時に重要である。

 このコミュニティで開発したコンテンツを学校と臨床現場で検証し品質の管理をすることにより、質の高いeラーニングのコンテンツを充実と、教員のコンテンツ作成負担の軽減が図れる。

 本事業では、まず教室教育と臨床実習の連携および補完をフォローするために、19年度に実施したeラーニング併用のリハビリテーション教育プログラムの検証を行なう。

 次に、その結果をベースに、より連携や補完の効果が大きく、教員や学生からの必要度が高く、多くの利用者が想定されるeラーニングコンテンツ教材のテーマや形態を決定し、昨年度からの継続的な開発として推進する。

 なお、開発にあたって、コーディネートを行なう担当者を置き、教員とコンテンツ制作技術者とのコミュニティを形成し、役割分担と協力体制の確立を図る。

 コンテンツ開発を実際に行なう過程において、コーディネーターの作業や役割を整理し、汎用的なコーディネーター育成プログラムを開発する。

 なお、コミュニティ機能を高めて教員の参画意識を強め、コンテンツ設計やコンテンツ学習を有効利用できる教員を増やすことも目的とする。